ウエガイト建築設計事務所 提案
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とかく建築をつくるに当たって、周辺への配慮といえば、日照障害・電波障害・ビル風など「負の作用」への対策が前に出がちですが、空き地であるより建築を建てることによって逆に周辺環境にプラス方向の変化が生じるような力が、建築にはあるはずです。
本提案は、沖縄地方、そして国際通り商店街における環境条件を前提とした、次の3つの「アクティブサーキット」を計画するものです。
国際通りに新しく商業施設を計画するに当たっては、本施設が「食い合い」や「一人勝ち」を引き起こすようなものであってはならないと考えます。あくまで商店街全体の流れの中の一部分として、ショッピングの流れを更に誘発し、加速させることのできるものとするため、本施設のメインボディであるテナントゾーンは、通りの延長として通過しながらショッピングが楽しめるように、地下2階から地上2階に連続的に計画します。更にこのような観点から通り全体を俯瞰すると、本計画地の属する国際通り商店街には、ショッピングに疲れた際に気軽に一休みできる場所が不足しているのではないかと考え、次の涼のアクティブサーキットを重ねます。
ちょうど通りの中間地点が本計画地であることもあり、国際通りの中に大きな木陰をつくって涼を提供します。
太陽高度が非常に高い沖縄地方の日射特性から、真上と西からの日射だけを遮れば陰を作れるので、建築自体を大きな逆L型の断面形にすることによって、気積は大きいのに直射日光を受けない外部空間を確保します。この空間を通りのレベルから連続する斜面緑地として、気化熱を利用した緑陰空間となります。また同時に、上空のフロアを支える構造柱を杭から一体の鋼管として、夏期の気温より十分低い地下温度で冷やされた空気を管内で循環させ、柱の周囲に冷輻射が発生する環境装置とします。
これら「気積の大きい日陰空間」、「気化熱を発生させる緑化面」、「冷輻射鋼管柱」によって周辺との微妙な温度差が起こり、通りに気流(そよ風)が発生することも期待できるのではないかと考えます。
琉球はかつてアジア地域との貿易の窓口であったという歴史特性に着目し、地上部分は本計画の付加施設として、民間どうしの対アジア諸国向けのミニトレードセンターを提案します。
大がかりなコンベンションは既存の諸施設を利用するとして、民間レベルでの小規模な貿易取引や商取引に活用できるように、土産物街でもある国際通り商店街の中心に、かつての琉球のオマージュとしての機能---大商談場(アジアンラウンドテーブル)、同時に小規模な取引ができる商談室群(ラウンドテーブルズ)、ミニコンベンションの開けるスペース(コンベンションベルト)---を計画します。
本建築の外壁は、木陰広場に面する面以外は基本的に、沖縄ならではの花ブロックを面的に用いたラフでポーラスなデザインとします。特に最上階のコンベンションベルトは、花ブロックを2列に積み並べてその間をエアカーテンのみとし、真夏以外はできるだけ自然換気によって涼が得られるようにします。
また、商業施設の宿命とも言うべきコマーシャルサイン(看板)が、将来に亘って増殖することで建物の外観を損ねないように、通りに面した外壁は、初めから色とりどりの看板が取り付くことを想定したランダムでカラフルな着色を施します。
本計画の主体構造はRCラーメン構造とし、スラブはランダムな柱列を許容するボイドスラブとします。木陰広場部分は支持杭である鋼管杭と連続した鋼管柱とし、1階の床レベルで杭と柱が切り替わります。
杭は電気的な防触システムを用いた鋼管杭とし、これを先打ちすることによって、地下の躯体を逆打ち工法とすることができます。
私たちは、意匠・構造・設備がそれぞれ単独で存在する建築よりも、それらはできる限り相補的・複合機能的であるべきと考えます。木陰広場に林立する鋼管柱は、本提案における意匠・構造・設備の複合環境装置として計画されます。鋼管柱と鋼管杭との管内を空気的に連続させて、これらは夏期における冷輻射を発生する環境装置となります。
私たちは「沖縄ならではの地域特性」として、
1.(主に夏期に)真上から射す強い日差し、
2.暴風雨を緩衝しそよ風は受け入れることのできる花ブロックの知恵、
3.他のアジア地域貿易の玄関としての琉球、
という3点を抽出し、それらを種として本提案を組立てました。
概要
建物用途:商業施設
(テナント+コンベンションセンター)
建築面積:1515.23m2
延床面積:6401.68m2
テナント部床面積:4463.36m2
(内、占有床面積:3320.16m2
コンベンションセンター部床面積:1938.32m2
階数:地上7階地下2階
構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
※本提案は竹内アトリエ、江尻建築構造設計事務所、渡辺建築設備設計事務所、神設備企画設計との共同設計です。
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